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(SPECIAL THANKS TO "Mr.MASA")
【蘇える金狼】
松田優作には"遅れてきたヒーロー"の印象が強い。たしかにかつてのプログラム・ピクチュアのスター・システムにのっていれば、彼の活躍の場は、もっと大きく、もっと幅広く、用意されていたかもしれない。
しかし、黄昏のスター・システム崩壊期にこそ、まさしく松田優作は、うってつけのヒーローとはいえまいか。不敵な面魂は常識的な価値観をくつがえすのに最高の武器だ。一本のプログラム・ピクチュアとて、今はおろそかにできないという緊張感が彼を支えているのか。
"遊戯シリーズ"で開花した、都会的でニヒルな横顔と、気弱くとぼけて見せる三枚目の横顔。おそらく、その両者のアンサンブルの中にこそ、ひとつの現代があるのだ。硬軟両面のキャラクターのどちらの側面にもリアリティを与えつつ、松田優作は、いわゆるヒーローでも、アンチ・ヒーローでもない。
ネオ・ヒーローというべき形(スタイル)を模索しているにちがいないのだ。トレードマークというべきサングラスの下の視線は何を見つめているのだろう。
ひょっとしたら、次から次へとアクションがアクションを呼ぶ、映画の中で、エキサイトする自分を醒めて見つめているのかもしれない。
なぜ、いま松田優作か、と問われれば、<昼は羊のようにおとなしく真面目なサラリーマン。夜は非情の一匹狼>という設定を、これほど生々しく切実に演じきれる男がいないから、という答になる。
理性に裏付けされた狂気がどれほど強いものか。会社の首脳陣を前にして、彼が開き直り、凄んでゆく過程の、ほとんどこちらにカタルシスさえ覚えさせるやりとりに、それは十分表現されている。
ネオ・ヒーロー松田優作の魅力は、どうやらそのあたりにあると見た。
(映画評論家:1979年公開【蘇える金狼】映画パンフレットより)