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アレなんだよなぁ〜!?

 永遠の挑発
 松田優作との21年

【著者】松田麻妙【出版社】リム出版【ページ数】271ページ【発行年】1991

【読後感】

 松田麻妙(まみ)とは最初の優作夫人である美智子さんのペンネームである。

 穿った見方をすると美由紀さんの姉が熊谷真実。それを意識していたのか?

 副題の”21年”とは「妻としての存在」だった”11年”と別れてから美由紀夫人と一緒になる優作が亡くなるまでの”10年”の合算である。

 彼女の心情、優作のプライベートが実に赤裸々に語られている。当事者でなければ、絶対に知らないこと。ファンとしては新たな優作の一面が覗き見られる。

 彼は仕事の中でプライベートを曝け出すのを嫌っていた。その内面に隠された心の恫喝も妻によって語られる。

 しかし、優作が次第に彼女から美由紀さんに心が動いていく場面では揺れ動く女性の心情が切なく綴られている。美智子さんは意識的に彼を遠ざけようとしたが精神的に優作の呪縛から離れることは出来なかった事を認識したのだろう。

 彼女は優作と別れてから文章で生きていこうと決意したが確かに文章には人を惹きつける魅力がある。 また、題材として「優作」は格好の標的だ。彼の言葉による後押しも効いている。

 娘と父、妻と夫、美智子と優作、様々な役柄の中での距離のとり方、人間関係、お互いの人生に対する考え。その中に常にある優作の存在。まさしく彼女に対する「挑発」

 著書には優作を通して、人生を学んだ女性がいる。彼女は死ぬまで彼から離れることは出来ないだろうと確信する。たとえ、他の男と一緒になろうとも・・・。

美智子さんは本書を優作の没後二年で出版している。「優作」という人物を文章にするのは困難だっただろうなというのは想像に難くない。

 けれど、彼女が「アクション」を優作に対して望んでいたとは…。優作は自分に対しても他人に対しても厳しかっただけに過去の作品への惜別を次々と作品の中で行っていた。特に自分が演じた昔のアクションに関しては嫌悪感さえ示していた。

 一方、ファンの心理は優作の躍動する姿や走る姿を単純に見たがっていた。それを美智子さんは感じ取っていたのだろう。私も文芸作品とは別に彼のアクションを見続けていたいという気持ちはあった。

 優作の拘り。そこが彼の魅力であるから人々の欲望のために囲いに追い込むことは出来ない。それも一番分かっていたのが美智子さん。

 その彼女は優作まで一番近い存在から離婚によって、最も遠い存在のごとくになったのを痛感してのではないか。彼と11年もの間、プライベートな生活を一緒に過ごした女の文章はそれだけに重い。

 自然に優作の素顔が見えてくる・・・。



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