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負犬道(まけんどう)
【著者】丸山昇一【出版社】幻冬舎【ページ数】317ページ【発行年】1997
【読後感】
自分の尊敬する人物のために魂を捧げた映画製作から去らざろう得なかった男・伊原啓一。彼はもと出入りしていた制作会社の社長・馬場から何と探偵の仕事を依頼される。それは彼の経歴からすると実は初めてのことではなかった。
その依頼内容はある映画を制作するための許可を赤松信行というヤクザに求めることであった。だが、その調査は意外な形でケリがつく。そして、更に映画界を去る理由となった娘・宇威のために金を稼ぐ必要があった伊原は自己の意には添わなかったが馬場の2つ目の仕事も受けざろう得なかった。
その依頼者は伊原が問題を起こしてしまった尊敬する人物の弟からであった。それはその妻である鮎子という女性の行方を探すことである。彼女は突然離婚届を残し、4000万円という現金を持ち出し、失踪してしまう。
複雑に「しがらみ」が絡む調査であったがそれにも増して、伊原は最後まで尊敬した人物がこの背後にいることの事実の方が彼自身を愕然とさせる結果となる...。本書は丸山昇一と松田優作やはりこの事を考えずに読むことは出来なかった。
この伊原という男と周りの環境はやはり優作を頭に置いて書いたのだと勝手に解釈してしまう。だが、正直に言って、最初の出だしは脚本のようなぶつ切れの文章が続く。丸山さん、あんたに「小説は無理なのか?」と率直に思った。
しかし、10ページを越えた辺りから段々と小説特有のリズムに乗ってきたようである。そして人間特有の「しがらみ」を利用しながら主人公の伊原を中心として話は展開して行く。最後はその「しがらみ」が予想外の方に事件を持っていく。
この辺は丸山昇一の力量が十分発揮されている。それと映画界にどっぷり浸かる丸山氏の著述として心に残るのが「...映画の製作現場にいるものは、短い批評でもむさぼるように読むクセに、どういう論評がなされてもあんたにゃわかっていないと居直るところがある。...」実際、製作現場に関わる人間の本音だと思う。
それにしても優作が今も生きていて丸山と共にこれを映画化して欲しいよな〜。本書を読めば皆さんもそう思うだろう。