Yusaku Market
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アレなんだよなぁ〜!?

"憧憬する存在" by 崔洋一


(SPECIAL THANKS TO "Mr.YOUNOSUKE")


 松田優作の再評価が高いという。

 何度か再放送された優作の『探偵物語』の影響なのか、当時の優作を直接知らない若者たちが熱狂しているという。どうやらその人気はテレビ視聴者の懐かしさや思い出の充足のためではなく、新たに出会ってしまった攻撃的な物語であったり突出するその演技であったりするようだ。

 十五年以上の時を経て、優作の演技スタイルや饒舌で毒を含んだセリフが、今も生きているということになる。優作のヒストリーを紐解くまでもなく、優作の存在は、その肉体に求心力があったと言っても過言ではないだろう。

 三角形の鋭角な顔、長い腕、大きな手、猫背気味ではあるが鍛えられた上半身、長い脚、そのどれもが特徴的であり、また魅力的であった。それは、優作の芝居を構成する、大事な要素そのものである。

 森田芳光監督『家族ゲーム』以前の優作が好んで演じていたアンチ・ヒーローのアクション映画やリアリズムを徹底的に排除したスラプスティック(どたばた的)な活劇とコメディーは、それを裏付けている。間断なく投げられる、一見乱暴な物言いとアクションは、巧みに計算された優作独特の話劇である。  エロキューション(台詞まわし)も含めて、相手の間からずれたり、わざと一間も二間も置いたり、相手の台詞に自分の台詞を先行させてダブらせる方法はあきらかに約束事を超えていた。そして、それを支えていたのが、優作の身体演技であったのだ。それは、古典的なスタニスラフスキーのシステム化されたリアリズム演劇とは対極に位置するものだ。

 キムタクがテレビ番組で模写する優作像は、パロディーを超えて、あきらかに憧憬する存在に近づきたいキムタクの想いが濃密に出ている。こんな気分は実は近ごろ僕自身が持つ気分でもある。

 優作の企画ながらついに実現できなかった物語を、今僕は作ろうと思っている。『ドッグ・レース』という映画である。【映画監督】(中日新聞夕刊"紙つぶて"に掲載)



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