MOVIE 10
【581-590】
サンドラ.ブロック、ジェイソン.パトリック、ウィレム.デフォー、タムエラ.モリソン、グレン.プラマー、ヤン.デ.ボン(P,D)/1997/125′/97.8.8
試写会にて観映。ジャックと別れたアニーは自動車の教習中に新しい恋人アレックスの本当の職業を知る。彼はL.A.P.Dで危険部隊の精鋭SWATの一員であった。アレックスは職業を偶然に知られてしまった罪滅ぼしにアニーを豪華客船によるカリブ海1週間のクルージングに誘う。しかし、コンベンションのために3億ドルのダイヤをも積んだシーボーン.レジェンド号に危険が迫っていようとはこの時、二人はもちろん誰も予想だにしていなかった。そしてアニーとアレックスを含め800名を越える乗員、乗客を恐怖に陥れた男はゴルフバッグを持つ頬の痩けた中年であった。シー.ジャックを敢行した男の名はジョン.ガイガーといい、携帯コンピュータによって彼の計画は進行しつつあった。何の因果か乗員や乗客をコントロールしつつ、更に船の進行方向にも気を配りつつ、ガイガーを追い詰めなければならなくなったアレックスとアニー。この犯行に至るまでのガイガーの動機はコンピュータによって銅に犯された体とそれによって虫けらの如く仕事を追われた怨恨によるものであった。彼の怒りは遂に豪華客船を巨大タンカーに向かわせる...。私がスピード2の情報を初めて得たのは今をときめく小室哲哉がメインテーマ曲を担当するというニュースからであった。今、映画を見終わって、そんな音楽など殆ど印象に残っていないところから自分にとっては大したものではなかったのだろう。この様な映画の中では音楽の効果はどうしても画一的になりがちなので存在感を示すことは難しいであろう。映画の内容については現在が旬のアニー演じる無表情で大根役者のサンドラ.ブロックを私自身が大嫌いということもあり、又、ヤン.デ.ボン監督の妙にダイナミックな米国のアクションフィルムを必要以上に意識した態とらしい派手な展開には第一作目同様に辟易したというのが正直な感想である。この映画から若干得られたのはアレックスに扮するジェイソン.パトリックのアクション俳優としての可能性とガイガー演じるウィレム.デフォーの最後に魅せるニヒルな笑顔だけであろう。
@タバタクの採点 2.13/5
松田優作、篠ひろ子、沖雅也、峰岸徹、結城しのぶ、岸田森、北見冶一、山西道広、津路清子、神山勝、田中邦衛、野際陽子、児玉進(D)/1979/92′/97.8.17
競輪場に入り浸り、一攫千金を狙うが負け込むヤツ.勝敏夫。彼は勝負の引き際に失敗して更に落ち込む。そんな時に勝はある探偵事務所の求人広告を見つける。その広告主で宇内経済研究会の社長.舞子は喫茶店にて即決で勝を採用し、直ぐに仕事の内容を話し出す。その内容は砂からくりで動く鳥の人形を製作するかくじ堂という玩具の老舗に関するものであった。依頼主は社長の廻鉄馬で彼曰く「製作部長で甥の智弘が会社で自分を追い落とすためのクーデターを仕組んでいる」という内容である。この一家には社長と智弘以外に営業部長で長男の総司、その妹の香、そして智弘の妻.男性的な名前の真棹がいた。この事件の発端は勝と舞子が尾行する中で起こった智弘夫妻の自動車炎上事故からであった。真棹は九死に一生を得るが智弘は病院で彼女に奇妙な行動の直後、息を引き取る。舞子と勝は事情聴取のために警察に行くとそこで元警官だった舞子の昔の同僚.楢木警部に会う。だが、この事件は乱れた人間模様からくりのほんの序章であった。そしてそんな中で勝は香の誕生日に招かれるが少しの時間に不気味な迷路の樹林で総司と会話中にあろうことか彼女は惨殺される。そして、自慢のカラクリ人形のコレクションの前でその総司までもが殺されてしまう。勝は調査を進めながらこの事件を解く鍵を廻家の先祖と金沢のある豪商の結びつきであると突き止めるが...。これは映画というより全体の色調が「火曜サスペンス」と同様のドラマ仕立ての感じを受けた。だから映画特有の重厚な印象は全くない。楢木警部演じる田中邦衛の態とらしい一本調子の演技もそれに拍車を掛けている。松田優作扮する勝と一緒に調査する舞子演じる野際陽子の大根役者振りにも腹が立ってきた。配役は名前だけ見ると一流どころであるが内容はお寒い。これでは優作が可哀想である。だからこのフィルムは映画は偶にでテレビ中心の視聴者に見てもらえればそれでよい。
@タバタクの採点 1.11/5
メル.ギブソン、レナ.ルソー、ブラウリー.ノルテ、ゲイリー.シニセ、デロイ.リンド、リリー.テイラー、ドニー.ウォールバーグ、エヴァン.ハンドラー、ロン.ハワード(D)/1996/122′/97.8.22
1971年に米国空軍を除隊したトム.ミューレンは1979年に自分で作った航空会社エンデバーが世界37カ国を飛びしかも全米で第四位の巨大企業で更にマスコミ向けのCM発表会までする会社に成長させた。だが、そんな幸せな家族をあざ笑うかのように誘拐犯の魔の手がミューレン一家を襲う。その犠牲者となったのはトムとケイトの一人息子.ショーンであった。彼はケイトが審査員を務める子供科学フェアの会場で消息が不明となる。そこには謎の気球が二つ残されていた。その後、誘拐犯の脅迫はショーンを写した動画入りのe-mailから始まった。トムは息子のために自分がFBIから贈収賄の嫌疑を掛けられていたにも拘わらずに意を決してその当事者の彼らに息子の捜査を依頼する。責任者はロン.ホーキンスという黒人捜査官であった。その折に犯人グループはトムに身代金として200万ドルを要求してきた。富豪になったトムに対しては低い金額だったので彼は直ぐにこのお金を用意し、息子の救出を第一に考えていた。それはFBIもケイトも一緒であった。そんな希望が翻ったのが最初の取引に失敗し、犯人の一味をFBIが殺してしまった時である。この一件によってこの誘拐事件はマスコミに広く知られることになる。トムはここで群がるマスコミを利用した起死回生の策を弄する。それはテレビ放映で200万ドルを身代金としてではなく、犯人逮捕の懸賞金として使うことであった。妻のケイトやFBIのロンを始めとしてマスコミ、一般市民はこの突拍子もない考え方に反対した。そしてそのような状況にも拘わらず、トムは自己の信念に基づいて犯人の焦りを煽ろうとする目的から懸賞金を400万ドルに引き上げる。このやり方は一見奇策に見えたが誘拐グループのリーダーを動揺させる結果となる...。この中のFBIのやり方もそうだが日本でもやはり誘拐事件は人質の命を第一に考える。しかし、メル.ギブソン演じるトムは犯人の心理を考え、今までの策の逆をつき、誘拐犯の焦りを誘う。この展開が非常に新鮮に感じる。又、マスコミを逆利用するところ、逆探知を防ぐために携帯電話にスクランブルを掛けるところやe-mailでの脅迫などが現代を表現していた。それからこれでもう終わりかなと思う場面でのどんでん返しなどは最後の最後まで画面を楽しませてくれた。総合的に家族で観賞する一つのエンターテインメントとしては充分に佳作だと言える出来である。
@タバタクの採点 3.74/5
ウィル.スミス、ビル.プルマン、ジェフ.ゴールドブラム、メアリー.マクドネル、ジャド.ハーシュ、マーガレット.コリン、ランディ.クェイド、ロバート.ロッジア、ジェームズ.レブホーン、ハーヴェイ.ファースティン、ローランド.エマーリック(W,D)/1996/145′/97.8.23
人類は1969年7月に初めて月面に到達した。時は流れて米国の大統領は湾岸戦争の英雄.トーマス.ホイットモアであった。彼の支持率は次第に低下していたがもっと大きなものがトーマスを襲おうとしていた。それは最初ニューメキシコ州にあるSETIで未確認飛行物体として捉えられた。その頃、USAでは後に不思議な縁で結ばれる仲間達が別々の生活を送っていた。父親とチェスを楽しむディヴィッドはMITを出た秀才でありながら有線テレビの修理人に身を委ねていた。しかも彼は3年前に離婚し、その妻だったコニーは現在大統領の秘書をしている。スティーヴンは海兵隊のパイロットで大尉という身分でありながら現在は子持ちのストリッパーであるジャスミンに心を寄せている。ラッセルはベトナム戦争に参戦したパイロットであるがエイリアンに浚われたなどという突拍子もない発言で周りの人間はおろか、家族にまで愛想を尽かされている。そんな三人が地球滅亡の危機に立ち上がることになろうとは誰も想像だにしていなかった。7月2日以降、謎のエイリアンが操る宇宙飛行物体が世界各国で確認され、各国はその対応に苦慮していた。そんな折に米国ロサンジェルスには遂に巨大な宇宙母船が出現した。トーマス大統領も苦慮する中、ホワイトハウスをディヴィッド親子が無理矢理にコニーを通して大統領にある進言をする。それはエイリアンが発する秘密の信号についての事だった。そして大統領一行はディヴィッドの言葉でホワイトハウスからの脱出を決行する。7月3日に彼らはエイリアンに反撃を試みるが彼らの厚いシールドの前に核ミサイルすら跳ね返されてしまう。だが、この日、ひょんな事からエリア51で秘密裡に進められていた宇宙生物に関する研究から打開策が見つかることになる。そして運命の7月4日米国独立記念日にこのディヴィッドが考えた人類史上最大の作戦によって人類滅亡の危機にある世界が一つになり、そしてその時にスティーヴン、ラッセルそれとトーマス大統領が自分達の任務を全うすることを誓う...。ビル.プルマン演じるトーマス.ホイットモアというのはこの前の大統領選挙でも話題になっていたコリン.パウエルが下敷きになっているのだろう。最初の国民の期待が段々無くなっていくところは戦場の英雄が必ずしも政治の世界でも英雄では無いという現実を直視している。それとこの映画が145分という長編になったのは最後の先頭シーンに絡むスティーヴン扮するウィル.スミスやディヴィッド演じるジェフ.ゴールドブラムなどの戦闘への参加を自然に見せるように女を含めた人間関係などの描写に時間が掛かったのだろう。だからその部分はこじつけが少し誇張され過ぎて、少々退屈な時間だった。しかし、最後の戦闘シーンはそれらを払拭させるくらい胸が空く圧巻の場面展開であった。
@タバタクの採点 3.99/5
ブルース.ウィルス、クリストファー.ウォーケン、ブルース.ダーン、ディヴィッド.パトリック.ケリー、カリナ.ロンバード、ネッド.アイゼンバーグ、アレクサンドラ.パワーズ、黒澤明・菊島隆三(原)、ウォルター.ヒル(W,D)/1996/101′/97.8.23
「人生を歩むには二つの方法がある-1つは悪党の生き方を極める、もう1つは堅気として真っ当に生きることである」何時も追われる身のジョン.スミスはもちろん最初の生き方の典型であった。その彼がメキシコへの逃亡途中に偶然に寄ったテキサスの寂れた町.ジェリコにて独特の臭覚で金の匂いをかぎわける。その匂いは壊された車とある女の存在から認識した。この町は一般町民がもう殆ど住んでおらず、町は二つのギャング団と悪徳保安官に牛耳られていた。ギャング団はストロッジをボスとするイタリア系マフィアとドイルをボスとするシカゴ系マフィアの組織に別れていた。彼らの資金源は両方とも禁酒法の中で酒を密売することであった。この関係を酒場のオヤジから聞いたジョンは早速、早撃ち二丁拳銃を武器にストロッジに用心棒として雇うよう接近した。それを了承したストロッジだったが部下のジョルジョはジョンのことを徹底的に毛嫌いした。彼はこの機を捉えて、今度はドイルに粉を掛ける。ストロッジの情報は彼の情婦であるルーシーと懇ろになることで得ようとしていた。だが、ジョンはドイルに対して情報だけは提供するがそれ以外では何故か煮えきらない態度を取り続ける。又、彼はドイルの仲間で1人だけ気になるヤツがいた-それが美男の狂気ヒッキーである。その上で彼の目的と希望は報酬を得ること、両方のギャング団がこの町から消えることそれとルーシー同様にある女の事が気に掛かり助けたいということであったが...。この原案は1961年に製作された黒澤映画の傑作「用心棒」である。それを監督ウォルター.ヒルによってアメリカの西部劇風に仕立てられた。私はいつもならば大根役者であるジョン演じるブルース.ウィルスは余り好きではないが何故かこの映画の中の彼はいつもより気合いが入っていたし、凄い迫力を画面から感じ取れた。彼が黒澤映画が好きなのかどうかは定かではないがどうもこの態度から見ると黒澤に心酔している印象を受ける。もしかするとブルース.ウィルス自身もこの作品で演技の幅が広がったかもしれない。彼の次回作に期待する。原案の黒澤映画の方も近日中に観映したいと思う。そしてこのフィルムは非常に最後まで緊張感を楽しめた。違う意味でインデペンデンス.デイよりは映画らしい映画だろう。
@タバタクの採点 4.12/5
松田優作、高橋洋子、五十嵐淳子、桑山正一、岸田森、丹波哲郎、山本周五郎(原)、大洲齋(D)/1976/82′/97.8.31
越前の福井藩に一人の臆病侍がいた。その男の名は双子六兵衛と言って、無類の饅頭好きであった。その頃城下には仁藤高見という腕の立つ剣の師範がいた。彼は武道に傾倒する余りに他人を寄せ付けないところから周りの人間達には疎まれていた。その人柄が原因である事件が起きてしまう。それは藩を捨て江戸で出世を狙う仁藤を城下の侍達が襲うというものであった。始めは止めに入った加納という越前公に可愛がられていた男さえもその軍団に加わり、命を落とすことになる。その事に激しい憤りを感じた越前公は藩を捨てたこと、加納を殺害したことなどから仁藤に対する上意討ちを命ずる。これに名乗りを上げたのがこともあろうに藩一の臆病者であった六兵衛だった。六兵衛はそれを決意する前日に妹のかねから結婚出来ないのは兄上の所為だと言われたことが引き金となった。彼は命を受け、直ぐに仁藤の後を追う。アッと言う間に追いついた六兵衛は仁藤に自分の正体を知られる。まともに行っては全く勝ち目のない六兵衛はここで一案を講じた。それは周りの自分と同じような臆病な人々を巻き込むことであった。彼はその後、仁藤に付きまとい、人々の前で「ひ・と・ご・ろ・し」と罵った。仁藤は六兵衛を卑怯呼ばわりして正々堂々と武道による勝負を要求したが意に返さずに六兵衛は同じ行為を繰り返した。仁藤がある旅篭の松葉屋に寄った時もその言葉を発したが気っぷのいい女主人.ようはその言を無視して仁藤を泊める。仕方が無く六兵衛はその宿に泊まり、仁藤の行動を見張ることになるが夜中にようがやってきて六兵衛に仁藤を狙う理由を尋ねる。果たして翌朝から六兵衛はようと仁藤に付きまとう旅をすることになる。ように助けられ、富山藩での窮地も頭を働かせて避けることに成功した六兵衛は遂に仁藤の背後に迫るが...。最初のクレジットに入る前のシーンから実に特徴的な作品である。無音のまま、口の形だけで「ひ・と・ご・ろ・し」と表現をする。物語に突入しても普通の時代劇にありがちな緊張感がない。それは良いところであり、反面余り力を入れていない映画だとも言える。登場人物については双子六兵衛演じる松田優作のコミカルな演技と仁藤高見に扮する丹波哲郎のシリアスな演技の対比がとても面白かった。ある優作のファンなどはこのコミカルな部分が後のテレビ版探偵物語の工藤俊作に繋がるのではないかなどと評価をしていたくらいだ。全体としては82分と短すぎて最後の場面などは少し端折り過ぎて尻切れ蜻蛉になってしまった。だが、時代劇版エンターテインメントとしては非常に初期の松田優作を知る意味で貴重な作品である。
@タバタクの採点 3.58/5
スティーブン.セガール、キーナン.アイヴォリー.ウェイアンズ、ボブ.ガントン、ブライアン.コックス、ジョン.M.ジャクソン、マイケル.ジョンソン、スティーヴン.トボロウスキー、ジョン.グレイ(D)/1996/91′/97.9.7
LA市警殺人課ジム.キャンベル刑事の部屋に座る男-そいつはNY市警からやって来たジャック.コールだった。その頃、全米では「ファミリー・マン」と呼ばれる連続殺人犯で揺れていた。彼らはそれに関連すると思われたモーテル殺人事件捜査の最中、学校立てこもり事件の一報が入る。犯人の少年はジャックによって直ぐに逮捕されたがこの少年は町の有力者であるデュヴェレルという男の継子であった。この事からジャックは上司から裁判で偽証してくれと頼まれるが断る。その源流であるジムも驚くほど東洋思想及び仏教に造詣が深い男は自己の信念も容易には曲げない。その一方、モーテル殺人の被害者をジャックはロシア人と自己見当を付け、早速相棒ジムと捜査を始めるが間もなく二人はロシア・マフィアと思しき男達に取り囲まれてしまう。ジムが驚愕する空手とクレジットカードでこの危機をジャックは乗り切る。その直後に又殺人事件が起きる。被害者は精神科医夫妻であり、手口も現場の状況もモーテルの時と同じであったが事もあろうに被害者の一人はジャックの別れた妻エレンであった。その関係が事件現場から採集された指紋で判明し、ジムの知るところとなる。彼はジャックに疑問を抱き、過去を洗おうとする。そのジムに事件現場の奇妙な絵についての情報が入るが先に現場に乗り込んだのはジャックだった。彼はその男を射殺してしまい、警察手帳を返上する羽目になる。それでもジャックは諦めずにロスロブというモーテル殺人事件の被害者宅に侵入し、証拠探しをする。どうもこの2件の殺人事件にはロシア・マフィアが絡んだ化学兵器の密輸に関するものであるらしかったがその全貌が明らかになる前にジムの自宅に火が放たれた...。ジム.キャンベル演じるキーナン.アイヴォリー.ウェイアンズが映画館で泣かないと強がりを言っていた「カサブランカ」を見て号泣していたのが緊張感のある話の展開に人間的な味を添えていた(実は私も何回も泣いている)。又、ジャック.コールに扮するスティーブン.セガールの空手の切れ、迫力のある表情や動作、目の配り方などワンパターンとは言われてもいつも興奮でどきどきしてしまう。シュワちゃんとは別の意味で本当に強いヒーローでは現在比類無き人物であろう。この映画は少し時間が短かったので彼の良さを十分に堪能するまではいかなかったがアクション刑事映画としては充分楽しめるだろう。彼の映画の脚本は複雑なものでなくて単純なものでよいと思う。それは彼自身が非常に魅力的であり、彼自体がシナリオに成るからである。
@タバタクの採点 3.51/5
シルベスター.スタローン、アミー.ブレネマン、ヴィゴ.モーテンセン、ダン.ヘダヤ、ジェイ.O.サンダース、カレン.ヤング、クレイアー.ブルーム、ヴァネッサ.ベル.キャロウェイ、レノリー.サンティアゴ、コリン.フォックス、ダニエル.ハリス、トリーナ.マギー.デーヴィス、ロブ.コーエン(D)/1996/114′/97.9.8
N.Yで不法投棄される有毒廃棄物を積んだトラック群。これが悲惨な大事故の原因になってしまった。原因を作ったのは一台の盗難車がマンハッタンとニュージャージーを結ぶ大動脈にあるトンネルを暴走しての事であった。スピードの出し過ぎでこの車は制御を誤り、有毒廃棄物のトラックに激突し、大炎上させた。閉ざされた空間のトンネル内は直ぐに火が回り、続いて小爆発と崩落が起こり、入り口が塞がれると通行中だったドライバー達とその同乗者はパニックに陥った。偶々その現場の直前に居合わせたのが現在はタクシードライバーだが元EMS(緊急医療班)だったキット.カトゥーラであった。今は民間人でありながら彼は過去の苦い経験から強行に警察本部に乗り込み、救助の仕方を指示した上で単身トンネル内に侵入する。3基の換気扇という大関門を乗り越え、彼は遂に閉じ込められた人々に達する。人々は様々な経歴を有していた売れない戯曲家、同僚が彼女の警官、売れ行き不振のシューズメーカー社長、囚人達、犬を連れた息子を亡くした老夫婦、仲がしっくりいっていない家族...であった。キットは自分の相棒に積極的に警察との交信を行った売れない戯曲家マデリーンを指名する。そして、最初は素性の分からないキットに疑問を感じていた人々だったが数々のパニックを彼と共に切り抜けていく内に皆の心が段々一つになってゆく。そんな中で非情にも土木局局長が勝手に人々は死んだと判断し、ドリルを使い、交通の復旧を優先させる策を採る。そんな彼らにキットが助かるための一筋の光明を見いだすがなんとそこにおいて彼はマデリーンと二人だけ取り残される結果になるとは...。この映画の原因とは違うが北海道では国道229号線において、1年半前の豊浜トンネルに続いて第二白糸トンネルで最近崩落が起きて未だそこは復旧されていない。このフィルムはそんな生活道路をいつも利用する人々にとっては全くひと事ではない。そして警察と土木局の無責任なやり取りも道庁と開発局を彷彿させる。全編を通じてシルベスター.スタローン演じるキット.カトゥーラの行動と勇気には本当に感動させられたがそれ以上に現実の方がもっと恐い。キットの中には過去の教訓がしっかり生かされていたが現実の政治なり、行政は卑怯と無責任の固まりである。大きな岩盤の除去作業などをニュースで見ていると遅々として進まないことに人間の無力さを感じるがどんな小さな存在の人間であっても学習をし、そこから学んで利用することは十分に可能である。それがもし出来ないのならば勉強が少しばかり出来たからといって本来は世のため人のためにする仕事に従事しないことである。それは世の中にとって罪悪であると思うべきだ。この映画については道庁と開発局の人間は下らない接待の時間を割いても絶対に見るべき作品である。
@タバタクの採点 4.13/5
ミッキー.ローク、ボブ.ホスキンズ、アラン.ベイツ、サミー.デーヴィス、リアム.ニーソン、レナード.テルモ、カミル.コーデュリ、モーリス.オコーネル、マイク.ホッジス(D)/1987/108′/97.9.10
米国版ビデオにて観映。スクールバスが兵士の隊商を追い抜こうとしていた時に突然爆発が起こった。この事実で呆然として恐ろしくなったマーティン.ファロンはその場を去った。その意味はIRA自由解放軍であった彼が兵士を殺す目的で爆弾を仕掛けたのだった。決して罪のない子供達を殺害する気はなかった。その後、この事が幻想ではなく、現実であることを確認したマーティンは死に物狂いで彼の暴力的な生活から抜け出そうと元傭兵で現在は神父になったコスタに救いを求める。だが、自由解放運動は彼の魂を欲し、ギャングは彼の心を欲し、警官は彼の血を欲した。マーティンはこれらの人間達によって様々な罠を仕掛けられる。その彼が欲したのはただ自由だけだったのだが...。印象的なシーンはマーティン.ファロン演じるミッキー.ロークが心の底から懺悔をし、コスタに扮するボブ.ホスキンズに救いを求める場面とコスタが育てていた目が不自由な娘に優しい気持ちを投げ掛けるところである。彼の心の中にはおそらく自分の不注意から爆弾で殺してしまった子供達に対する後悔の念が深層心理に潜んでいたのだと思う。しかし、物事には悔やんでも悔やみきれないことが存在する。マーティンの生命は最後までその事実に委ねられていたのだろう。けれど、過ちを悔い改めることは非常に勇気のいることだと思うが人々に迷惑を掛けない過ちをしないことの方がより困難な事なのだ。マーティンの言動と態度に人間の弱さを充分に感じた作品である。それにしても人間の心理描写を描いた米国版ビデオの説明に"THRILLER"と書いてあるのは絶対に解せない。
@タバタクの採点 4.03/5
松田優作、大楠道代、東恵美子、楠田枝里子、佐野浅夫、玉川伊佐男、江角英、榎木兵衛、内藤剛志、加賀まりこ、大友柳太朗、佐藤B作、栗田陽子、高杉哲平、トビー門口、原田芳雄、中村嘉葎雄、泉鏡花(原)、田中陽造(W)、鈴木清順(D)/1981/139′/97.9.16
1926年大正時代の東京。病院へ見舞いに行く途中、老婆から女の魂であるという酸漿を買う女。そんな女に男は出会った。その男の名は松崎春光と言い、新劇の脚本家であった。その後、松崎は夢か陽炎か、その女の滴の垂れる髪、川を渡る姿を記憶に留めた。遂に彼はその事を玉脇という自分を支援してくれる伯爵に告げる。その頃、玉脇にはお稲という妻がいた。彼女は現在危篤状態であった。それにも拘わらず松崎は彼女の死後と思われる時間に幻の女を見かけた階段で会ったという。それから彼は玉脇の使用人みおという女から伯爵には妻が二人いる事実を突き止める。一人のお稲はドイツ人であり、もう一人は...。そんな中で松崎は謎の女から手紙を貰い、「4度目の逢瀬は死」と書かれていたがそれにも構わず、目的地の金沢に向かう。汽車の中で彼は人形を扱う恋心という男と意味深に心中を見物に行くという例の玉脇伯爵に出くわす。だが、松崎はたどり着いた金沢で予期せぬ場面に遭遇する。それはお稲と幻の陽炎女が夜叉ヶ池を渡し船に乗っていたという光景だった。この信じられない光景の意味が玉脇に再会し、疑問が解ける。この幻の陽炎女は実は彼の後妻で姿子と言った。玉脇によると姿子は松崎との心中を望んでいるという。玉脇からも勧められるが彼はやっとの事で彼女との心中を免れ、その後、恋心が関係した人形の秘密と子供劇団の芝居から物事の真相を覚ることになるのだが...。この作品の原作である泉鏡花の世界を理解するのは非常に困難である。彼が描く表裏一体の世界、不条理な世界などは名監督の鈴木清順や名優の松田優作がかなりの場面までは演ずることが出来ても全部を表現することは到底不可能であろう。それでも松崎春光演じる優作は表情や体位など隠微な世界を具現化することに心を割いていたシーンが随所に見られた。特にお稲に扮する楠田枝里子とまぐわうまでの場面は実に秀逸な出来である。優作の手の表現が特に良い。そして、この映画を3つのセリフで説明するとすれば、私なりにそれらを挙げると「近づけば近づくほど、遠くなる」「見尽くしてしまったら壊すしかない」「夢が現世を変えた」となるが皆さんはどうだろうか。このフィルムは内容が非常に深いだけに解釈の仕方は十人十色かもしれない。
@タバタクの採点 解釈困難のために不可能
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