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アレなんだよなぁ〜!?

23. 嵐が丘 ARASHI GAOKA

【出演者】松田優作、田中裕子、名高達郎、石田えり、荻原流行、高部知子、古尾谷雅人、伊東景衣子、杉山とく子、今福将雄、うえだ峻、志垣太郎、不破万作、十貫寺梅軒、三國連太郎、大沢健、井上博一、近藤花恵、中西和久、武重裕子、松本幸三、小日向範成、村田暁信、六浦誠、永田光三、小池栄、長田誠、崎田美也、中島次雄、永幡洋、真木仁、植田敏生、山口年美、円谷文彦、小田島隆、茂木幹雄、渡辺安章、奈良光一、北原祐司、土岐秀淳、猪秀邦、千葉隆、若駒、劇団あすなろ、舞塾、丹波道場、東映演技研修所、劇団東俳、テアトルアカデミー、早川プロ【監督】吉田喜重【脚本】吉田喜重、E・ブロンテ(原作)【音楽】武満徹【製作】高丘季昭【プロデューサー】山口一信、Francis von Buren【製作会社】西友(西武セゾングループ)、MEDIACTUEL【製作年】1988【上映時間】143′【封切日】1988.5.28

【あらすじ&感想】

 啀み合う大蛇(オロチ)一族の末裔である山部家.東の荘と西の荘。

 その東の荘高丸(三國連太郎)が町から連れられてきた男の子を鬼丸(松田優作)と名付けた。その時、高丸の子供は二人いた。一人は秀丸(荻原流行)という男の子でもう一人は絹(田中裕子)という女の子であった。秀丸は氏素性の分からない鬼丸を下人と呼び、蔑んだが絹は何故だかこの野卑な男を寵愛した。

 しかし、深山に閉じ込められた彼らは昔からの慣わしで町からは隔離され、おなごは年頃になると町に出て、御子として奉公しなければならなかった。この定めに反発を感じた絹は対立する西の荘にいた光彦(名高達郎)という男と一緒になれば、深山を離れなくてもよいと考えを巡らせた。

 だが、その直後、高丸は深山に侵入した賊の一撃に命を落とす。今生の別れの折に父は絹に「男の子が産まれたら東の荘を継がせ、生まれなかったら鬼丸に継がせ」と言い残す。絹が西の荘に嫁ぐ前夜、感情を押さえきれない鬼丸と彼女は心ゆくまでまぐわう事となる。

 そんな事情の中、家を離れていた秀丸が妻子と共に父の悲報を聞き付け、帰ってくる。彼は東の荘から鬼丸を追い出し、父亡き後、太夫を継ごうと考えていたが賊によって妻.紫乃(伊東景衣子)が殺され、志し半ばで気が触れてしまう。

 残されたのは下人として生きていかねばならなくなった息子.良丸(古尾谷雅人)。そして、西の荘に嫁いだ絹が生んだのは東の荘の跡取りのおのこではなく、おなご.絹(高部知子)であった。

 一方、一度は深山を去った鬼丸は都での戦の褒美として将軍から深山を含む地域一帯の地頭を命じられていた。彼の目的は只一つで愛する「絹」だけであった。それで地頭という地位を利用し、西の荘に向かった鬼丸であったが絹と会わせることを頑なに拒んだ西の荘光彦がそこには存在していた。

 その頃、実は彼女は難産による病から体が死の寸前まで蝕まれていたのであった。そして、鬼丸に対する憎しみの言葉と自分と同じ名前の絹という娘をこの世に遺し、光彦の前で息を絶える。けれど、それでも諦めきれない鬼丸の姿が亡くなった絹の墓の前にあった...。

 原作は外国人であるところからそれを基にして「日本版」として脚本を書き上げた。

 背景にあるのは重々しい大蛇伝説であるが今風に簡略化して言うと「絹という女に心まで奪われてしまったストーカー.鬼丸」という表現が当てはまるであろう。それを裏付けるのは田中裕子演じる絹がお産の時に名高達郎扮する光彦に話す「鬼丸は私、私は鬼丸」というセリフに象徴される。

 だが、絹も実は深層心理の中で松田優作演じる鬼丸の鬼気迫る性格に魅せられていたのだろう。それから結果は分からないがこの映画はカンヌ映画祭にも出品されている。賞に全く興味がない私にはどうでもよい事だが。

 それにしても結果的に薬で芸能界を去ってしまった高部知子の抜群の演技力は日本映画界にとって多大の損失であった。

 また、話は飛ぶが最近は「もののけ姫」で話題のアニメの鬼才.宮崎駿監督があるテレビ番組のコメントで「最近は大人の映画が感情を旨く表現していないから本来は子供向けのアニメでそれをしなければいけない」としみじみと語っていた。私も本当にそれには同感である。

 才能のある映画人に期待するのは変に奇をてらった物ではなく、心から感動を与える大人の映画を製作して欲しい。この映画を例に出すまでもなく、今まで書かれた書物の中に未だ映画化されていない宝物が絶対に含まれている筈である。もし、万が一、私が見つけることが出来たならば、このページで紹介したいと思う。


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